~町おこしとは?~事例からお仕事まであなたの疑問を解消!

「町おこし」と聞いて、どんなことを思い浮かべますか?

地域のお祭りや特産品のPR、ふるさと納税、アニメとコラボしたイベントなど、人それぞれ色々とあると思いますが、ある意味どれも当てはまります。

ある意味というのは、これらは「町おこし」の手段としてはどれも当てはまるのですが、手当たり次第にこれらを実施していけば良いわけではなく、町(地域)によって適切な手段は変わってくるからです。あの町(地域)がアニメとコラボしたイベントで成功したら、ウチの町(地域)でもアニメとコラボして観光客を呼ぼうと同じ事をしても、成功するとは限らず、むしろ失敗する可能性の方が高いとも言えます。

この記事では、「町おこし」を検討している、「町おこし」の成功方法を知りたい、「町おこし」に関わるためにはどんな仕事があるの?といった「町おこし」のアレコレを実際の事例を参考に紹介していきたいと思います。

「町おこし」に絶対の正解はありませんが、少しでも「町おこし」の理解を深め、関わり方や実施に向けた考え方の参考にしてください!

【筆者プロフィール】

地域を元気にすることを目指すフリーランス。
携わった地域の方々の笑顔が何よりの大好物です!

これまで千葉県や群馬県吾妻郡などの観光プロモーションから人口900人の熊本県五木村の
町つくりなど、個性や規模感の違う町つくりに関わってきています。

地域の課題はその地域固有のもので、本当にその解決は難しいですね。そんな地域の課題に
ソトモノとしての客観的視点と地域の方々と同じ熱い想いを掛け合わせ、
携わっていきたいと思っています。

1.町おこしとは

そもそも「町おこし」とは何を意味するのでしょうか?また、類似した言葉として「地方創生」や「地域活性化」といった言葉が存在しており、「町おこし」との違いはなんでしょうか?まずは、これらの意味を整理してみたいと思います。

・町おこし
地域の人口増加を図ったり、経済を活性化させるといった目的のために行う取り組み

・地方創生
少子高齢化や東京圏への一極集中を是正し、それぞれの地域で住みよい環境を確保して、将来にわたって活力ある日本社会を維持していくことを目指すことを目的とした政策

・地域活性化
地域経済や社会、文化などの動きを活発化させたり、地域の人々の意欲を向上させたりすることで、地域を維持発展させていくこと

いずれも非常に近しい意味合いをもっていますが、ここでは「地方創生」が政策であり、「地域活性化」は目的の意味合いを持っており、「町おこし」は取り組みを指していることから、「地方創生ないしは地位活性化に向けた取り組みを町おこし」としていきます。

2.なぜ今町おこしが注目されるのか?

今、「町おこし」が注目をされているのは、これがひとつの「町」の問題ではなく、日本全体の問題になっているからです。問題の原因は、今や誰もが認識している少子高齢化、東京圏への一極集中であり、今後これらの問題が一層深刻化していくことが予測されています。

こうした状況を懸念し、政府は2014年に「まち・ひと・しごと創生法」を成立させ、地方創生を推進してきましたが、現時点ではまだまだ問題点が解消されたとはいえず、少子高齢化は加速し、東京圏への一極集中はコロナ禍で地方への移住が進むかに思われましたが、2023年は転入が転出を6万8285人上回る「転入超過」となり、総務省は「コロナ前の東京一極集中の動きに戻りつつあるのではないか」としています。

つまり、政府が日本全体の問題と捉え、動いているにもかかわらず、まだまだ改善しきれてているといえないことから、ますます「町おこし」が重要視されてきているわけです。

3.コレが成功例と言われる町おこし

日本全体では少子高齢化や東京への一極集中は是正されていない状況ではありますが、個々にみていくと「町おこし」により地域の活性化に成功している地域があります。ここでは成功事例といわれる地域の「町おこし」をみていきます。

①地域産業を活かした町おこし

福井県鯖江市は眼鏡の産地として知られ、国内眼鏡生産の約9割以上のシェアを誇ります。そんな鯖江市は2015年10月に「鯖江市まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定し、「めがねのまちさばえ」をコンセプトとして地方創生の取り組み、2018年にはシティプロモーションガイドラインを策定。「お眼鏡にかなうまち」になるようプロモーション活動を推進していきます。その結果、人口増加や女性の就業率の高さ(女性の就業率・労働力率・共働き率全国1位の福井県において、県内トップの就業率)といった成果を生んでいます。

※参照:鯖江市

②アニメによる町おこし

埼玉県久喜市はアニメ「らき☆すた」の舞台として知られ、『訪れてみたい日本のアニメ聖地88(2024年版)』において、2023年版に引き続いて聖地の1つに選ばれました。久喜市では「らき☆すた」とコラボしたイベント(お祭り)や関連商品グッズ化など地域活性化を図り、テレビ放送以来の10年間での経済波及効果は約31億円、消費等の需要により雇用者数は約316名という経済効果をもたらしました。

※参照:久喜市

③自然を活かした町おこし

人口約6,500人の長野県阿智村は、2006年環境省が実施した全国星空継続観察で「星の観察に適していた場所」の第1位に選出された実績を活かし、「日本一の星空」を地域資産として、「町おこし」を図りました。民間主導でスキー場山頂での「感動体験ができる星空ツアー」を核にした観光イベントを通年で提供するなどのサービスを提供。村の人口の25倍に相当する年間16万人もの観光客を呼び込むことに成功。観光客の増加による地域の雇用者増加などの効果ももたらしました。

※参照:スタービレッジ阿智誘客促進協議会

④農業を活かした町おこし

石川県白山市では、企業経営の視点で農業の6次産業化に先駆的に取り組み、成果を挙げています。その代表が株式会社六星です。農家の高齢化による請負耕作ニーズの増加に対応して、近隣の農家から農地を請け負い稲作を代行、さらに農産加工を手がけ、自社直売所も開設し、自社の農産物・加工品を販売まで行い、6次産業化を成功させています。その結果、売上額は11億円を突破。さらに、女性や若手を積極的に登用するなど、多様な人材の採用を行なっています。

※参照:株式会社六星自治体ビジネスドットコム

⑤企業誘致・ワーケーションを活かした町おこし

沖縄県は「特別自由貿易地域」「情報通信産業特別地区」など、県が国の政策と連携しています。この利点を活かし、沖縄県うるま市では国内外の情報通信関連産業の一大拠点とするため、また日本とアジアを繋げるための架け橋となるためのプロジェクト「沖縄IT津梁パーク」を立ち上げました。IT人材の創出集積や優れた就業環境の提供を行うことをコンセプトとしており、これまで多くの雇用を創出し、企業誘致施策で成功を収めてきました。また、うるま市ではワーケーションにも力を入れており、多くの企業と連携した共創型ワーケーション実証実験を行い、社員のエンゲージメント向上やうるま市のサステナブルな町づくりに貢献するといった効果を生み出しています。

※参照:沖縄IT津梁パーク企業誘致.jp

今回は「町おこし」に成功した5つの事例をみてきましたが、この5つの「町おこし」に共有したポイントがあったことにお気づきになりましたでしょうか?次の章ではその共通のポイントについて考察していきます。

4.成功した町おこしの共通ポイント

前章では「町おこし」の成功事例をみてきましたが、成功してきた「町おこし」には明確な理由が存在します。それは元々持っている地域資源を活用していることです。石川県鯖江市は国内眼鏡生産90%以上のシェアという地域産業の強みを、埼玉県久喜市はアニメの舞台となったことを、長野県阿智村は「日本一の星空」を、石川県白山市の株式会社六星は農業の六次産業化により、沖縄県うるま市は県と国との政策を活かすことで、交流人口や関係人口の増加、地域経済の活性化、新たな雇用の創出などの「町おこし」に成功してきました。

また、もう一つのポイントが「町おこし」を推進する関係者の一体感です。「町おこし」には自治体や民間事業者、地域住民など立場の違う方々が関係します。各々の立場で思惑が違ったり、温度差があり、自己都合で動いていってしまう危険性を持ち合わせています。そこを、この「町おこし」はこの地域ための取り組みであるという目的の共通認識を関係者で持ち、一体となり推進していくことが重要となります。

このように、「町おこし」は目立つことや話題になることを単に実施すれば良いというわけではなく、地域の強みを明確にし、その強みを活かし、関係者が一体となり「町おこし」に取り組んでいく必要があるのです。

5.町おこしで陥りやすい失敗例

一方で、地域を活性化させたいと一生懸命取り組めば必ず成功するわけではなく、日本全体で少子高齢化や東京の一極集中が是正されないように、各地域が「町おこし」で苦戦しています。あの地域では「町おこし」に成功しているのに、自分の地域はうまくいかないのか?あの地域を参考に同じようにやっているのに、何も変わらないのか?など、その原因が分からず、悩み、苦しんでいる地域が多くあると思います。その原因は大きく2つあります。

1つ目は、「町おこし」の成功事例を自分の地域でそのまま実施しようとしているケースです。前述の通り、「町おこし」に成功している地域は地域の強みを明確にし、その強みを活かした施策を実施していることに共通点があります。なので、その成功事例をそのまま横展開しても、各地域地域の強みが違うので、うまくいくわけがないのです。「町おこし」に成功した地域の考え方は参考にしつつ、その戦略や戦術は各地域で異なってくることを理解し、取り組む必要があります。

2つ目は、人口増加時代の過去の成功体験から抜けられないケースです。時代は常に変化し、人々の意識は多様化してきています。そんな中、前例主義で過去の成功体験に囚われ、今のその地域の強みを再認識せず、過去と同じ手法を繰り返していては、何も生み出せず、失敗に終わってしまいます。きちんと今の地域の特性に向き合い、時代にあった手法を用いた「町おこし」としていくことが肝心なのです。

いずれのケースも他地域の事例や過去の成功体験をそのまま模倣していることに原因がありました。つまり、「町おこし」はその地域において、今現在抱えている課題を捉え、解決策を検討していく必要があるのです。

6.町おこしに関わる仕事を紹介

この章では「町おこし」に関わるためにはどんな職業があるか紹介していきます。自身の地元を盛り上げたい方、困っている地域のために貢献したい方、自分の好きな地域の魅力を発信したいなど、きっかけは色々とあると思います。自分の思いを叶えられる仕事探しの参考にしてみてください。

①自治体職員

「町おこし」に向け、企画立案から予算化を行い、民間企業やNPO、地域住民を取りまとめ、施策実施を取りまとめていきます。「町おこし」に直接的に関わり、中心となる存在ですが、自治体は3年前後で部署異動が多く、「町おこし」以外の部署に就くこともありえるので、募集内容をよく調べて応募してください。

②地域おこし協力隊

2009年総務省によって制度化され、1~3年の任期で自治体が雇用し、農業や林業、漁業や水源保全、地域住民の生活支援など、さまざまな取り組みを行います。自治体によって、人数や活動内容が異なるので、自分に合う地域や活動内容をよく調べてみることをおすすめします。

③副業・兼業

サラリーマンやフリーランスの方々が副業・兼業として「町おこし」に関わるケースは増えてきています。特に、ITやデジタルマーケティング領域は地域での人材不足から募集が多くなっています。今のスキルを活かし、地域貢献したいと思っている方は、色々なサイトで求人情報が出ているので、探してみてください。

④地域事業会社

地域に根ざした広告会社や出版社、旅行会社なども「町おこし」に欠かせない存在です。広告会社は地域の魅力発見から観光スポット・特産品のPR、出版社は地域の魅力を情報発信するメディア制作、旅行会社は地元の方しか知らないアクティビティや観光スポットを商品化するなど、「町おこし」に貢献していきます。

⑤町づくりNPO

NPOは非営利組織で、あくまでも「町おこし」や「地域活性化」を目的として活動しています。NPO自体の活動を通じて、町のブランディングや商品企画を行うこともあれば、地域企業をサポートや地域で活躍する人材の育成など、間接的にまちづくりに貢献することもあります。

この5つ以外にも、地域で事業を営む会社(農家・製造業者など)や銀行、鉄道会社など、まだまだ存在します。しっかり、職業と業務内容を研究した上で、ご自身の希望やスキルを分析し、マッチする仕事を探してみてください。

7.まとめ

「町おこし」について様々な角度から紹介してきましたが、ご覧いただいた通り、「町おこし」はお金があれば成功するわけではなく、また個人の熱意だけで実施できるわけでもない、非常に難しい取り組みです。その地域について、過去の成功体験や前例にとらわれず、強みとなる地域資源を徹底的に検証した上で明確にし、その強みで「町おこし」に取り組むんだという強い意志を関係者が一体となり共有していくことが必要です。

また、「町おこし」にこれから関わっていきたいと思う方には、多くの選択肢があります。自分のスキルを活かすことができ、「自分はこれがやりたい」という思いを自己分析するとともに、それぞれの仕事内容についてきちんと情報収集し、ご自身にあった仕事や職種を探してみてください。

・「町おこし」とは地域の人口増加を図ったり、経済を活性化させるといった目的のために行う取り組み

・「町おこし」は日本全体として取り組むべき問題であり、今後ますます重要度が増してくる

・成功している「町おこし」はその地域特有の資源を活かし、地域一帯となり取り組んでいる

・成功事例や前例の安易な模倣は失敗の原因に

・「町おこし」に関わる仕事は多く存在しそれぞれ特徴があるので、よく研究し自分にあったものを選定

「町おこし」はその地域のみの問題ではなく、日本全体で取り組むべき、以上に重要且つ必要な課題です。この記事を読んで、「町おこし」に興味をもち、考え、行動してくれる方が少しでも増えていけば幸いです。

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